噂の真相

最近テレビやラジオで話題になっておりますニュースがありますね。
我が群馬公国の名湯・伊香保温泉での温泉偽装問題。
週刊ポストが長野の白骨温泉の入浴剤問題に続いてスクープした記事だそうで。


これに関して、卒論で伊香保草津・そして温泉について調べた漏れからの見解を述べてみようかと。
今日はちょっぴり長いですよ?( ゜ー^)b


そもそも、伊香保温泉の旅館の中でいくつかの旅館が、水道水や井戸水を沸かして
温泉として客に提供していたというのが今回の事件の中心的事象。
・・・実はこれは我らが群馬公国の地元民の間では周知の事実なのですよ。
古来からの伊香保温泉の源泉は鉄分を含んだ「硫酸塩泉」で、赤褐色のお湯です。*1
古くからの湯治場として昔から源泉の奪い合いが絶えなかったために、
組合が作られて地元の有力者たちが源泉を管理して温泉の分配方式を作りました。
この時の有力者達が持っていた旅館・ホテルが現在の伊香保の大手老舗旅館です。
その組合の主である老舗旅館に金を払えば、場末の旅館でも源泉を手に入れることができました。
しかし、もともと伊香保温泉の源泉はそれほど湧出量が多くないために、
源泉を欲しがる旅館の数が増えてくると、源泉の供給量が旅館での消費量に追いつかなくなりました。
このため、伊香保にありながら温泉を提供できない旅館が続発することになります。
そこでこの事態を憂慮した伊香保町は、新たな源泉を採掘。
幸運なことに新たな源泉を採掘することができました。
ただ、こちらの新しい源泉は泉質が「メタけい泉」と言い、透明なお湯でした。*2
町はこの新しい源泉を有料で旅館に提供することとなり、
伊香保の旅館は「黄金の湯」と「白銀の湯」を客に提供できることになりました。
・・・そこで、今回の事件の真相です。
今回発覚した7つの旅館は、この源泉に払う金が無かったり、払う気が無かったりで
水道水や井戸水を沸かして「白銀の湯」と偽って客に提供していたのです。
しかも、現伊香保町長が経営する旅館では「白銀の湯」に入浴剤を混ぜて「黄金の湯」に
見せかけるという長野の件と似たようなことをやらかしていました。


「白銀の湯」掘削以前は水道水を沸かして内湯として提供していた事実を県民は知ってました。
そして、伊香保の源泉の供給量があまりよろしくないことを、
漏れは伊香保町出身の高校の同級生から聞いたりして知っていました。
折しも卒論の件で伊香保町役場に話を聞きに言った時に色々なオフレコ話もお聞きしてます。
正直な所・・・伊香保はちょっと観光客の下落が著しいのよね(;´Д`)
今回の件で、古くからの温泉地にも色々な事情があることを知っていただけたらこれ幸い。
今回の週刊ポストの記事は大体こんな所じゃないんですかね?
いや、漏れはあぁいう三流ゴシップ週刊誌は読まないんで分かりませんが。(´ー`)y~~~


実際の所、古くからの温泉でもそういった源泉の問題に悩まされている所はあります。
愛媛の道後温泉とかもそうです。源泉の供給量が落ちてきているので、
最近は「源泉かけ流し」から「循環型」へと代えた模様。
この「源泉かけ流し」というのは、
引いてきた源泉を浴槽に入れて、そのまま流動的に流して捨ててしまう方式の事です。
衛生的に最も安全ですが、源泉の供給量が豊富でないとこの方式はできません。
対して「循環型」は、浴槽にためた源泉を濾過したり沸かしなおしたりして、
同じ温泉のお湯をしばらく使い続ける方式です。
源泉供給量が少なくても維持できますが、反面衛生的にはとても問題があります。
人体に重大な影響を及ぼすレジオネラ菌などが繁殖することが多く、危険な場合がほとんどです。
このため愛媛県は、循環型を採用している温泉のお湯に塩素殺菌を義務付けました。
これは由々しきことです。衛生のためとは言えど、せっかくの温泉成分に塩素をぶち込むと言う荒技。
古くからの温泉ファンにとっては大問題といえましょう。もう温泉じゃないしね。
・・・とまぁこんな問題も実際に起こっているのですよ。


あとついでにもう一つ。
数年前に政府から「ふるさと創生資金」という約1億円もの金が地方自治体にバラまかれました。
多くの自治体では「町おこし」として温泉を掘削する例が多かったそうです。
近場に活火山や水脈等があれば、日本はわりとどこでも温泉が出てきます。
しかし・・・そうやって掘削した新興温泉は、源泉がただの温水溜まりだったりする場合が多く
数年で枯渇して何も出なくなると言うことも多々あるんですよ、奥さん。
仮に、出てきた温泉が成功だったとしても今度はその温泉施設の維持費という支出が
その自治体に重くのしかかることになります。
町おこし村おこしのために起死回生の思いで掘った温泉なのに、
逆にその維持費で自治体の財政が火の車になることだって十分にありえるのですよ。
それに・・・近隣の自治体で同じ水脈に当たる温泉をいくつも掘ってしまった場合、
被圧されている地下水の圧力が下がり、同じ水脈にある温泉は全て湧出量激減で共倒れ
・・・ということもあります。
まぁ、何事もやりすぎは良くないってことです。
温泉乱掘はあまりよろしくないと漏れの師事した水文学の教授は言っておりました。
あなたの街にも最近掘られた温泉はありませんか?
もしかしたらあと数年の命かもしれませんよ(;´∀`)



以上、大学で観光地理学と温泉の水文学をかじった程度の知識でしたが
漏れの所感を述べさせていただきました。



・・・たまには大学で丸々4年間遊んでた訳じゃないってことを示さないとな!(;´Д`)

*1:通称:黄金の湯。飲むこともできるが、味はやっぱり鉄の味がする。

*2:通称:白銀の湯。無色透明だが温泉成分はちゃんと含まれている。